メールやブログ、Web上の記事などで、たまに変な言葉の使い方を見かけます。
日本語は相手との距離感で使う言葉を変化させ、敬意を伝えることができる思いやりのある美しい言葉です。そしてそれがとても難しい部分でもあります。
最近ではTwitterやLINEなどのコミュニケーションで、短い言葉で伝えることが多く、それに慣れてしまうと正しい言葉の使い方に関して麻痺してしまい、ついつい間違った使い方をしても気にならなくなっているかもしれません。しかし、ビジネスでのメールやブログ記事などでは正しい言葉を使うように心がけておかないと、
「この人と仕事して大丈夫?」
と相手に思われているかもしれません。
今回は、受信したメールの文章でよく見かける言葉や、たまに耳にし違和感を感じる言葉などについてまとめてみます。
よくメールに書かれているフレーズです。
相手の会社に訪問する場合など、日時の約束や確認のメールで
「5月7日15時にお伺いさせて頂きます。」
と書かれていたり、見積りや企画書を送信した返事には、
「ありがとうございます。拝見させていただきます。」
と書かれていることがよくあります。
「伺う」「拝見」も「〜させて頂く」も「行く」「見る」「する」の謙譲語でそれを重ねて言うのは二重敬語となるので、正しくは、
誤 ☓ | 正 ◯ |
---|---|
15時にお伺いさせて頂きます | 15時にお伺いします 15時に伺います 15時に参加させて頂きます |
拝見させていただきます | 拝見します |
さて、ここで
「〜させていただきます。」
を、もう少し掘り下げてみましょう。この言葉、一見へりくだっているような感じがしますが、何度も連発されると、聞いていてだんだんイライラしてきませんか?
先日テレビ中継での国会中継で
「消費税を上げさせていただきました。」
とどこかの議員が言っているのを聞いてとても違和感を感じました。
ビジネスシーンにおいて日々のメールや口語でも
「提案させていただきます。」
「ご案内させていただきます。」
「紹介させていただきます。」
「送付させていただきます。」
「同行させていただきます。」
など、さまざまな場面でよく見聞きする言葉です。
「させていただく」という言葉は、「相手から依頼や許可を受ける場面、また恩恵を受ける場面」で使われる言葉なので、頼んでもいない時に使われると少し違和感を感じます。
また、わたし自身「〜させていただきます。」と一方的に言われると「こちらの意志や希望に関係なく、あなたの行動は既に決定しているということなのですね。」ととても上から押し付けられているように感じます。決して相手を敬っているように感じないのは、わたしだけでしょうか?
「させていだだく」という表現には、場面によって正しい場合、そうでない場合など色々とありますし、文法的にも諸説あるようなので、各自の判断が必要だと思いますが、重要なのは「考えて使う」ということだと思います。ただ何気なく、みんなが使っているから、よくわからないけど...で適当に使うのは自分の気持ちが相手に伝わらないかもしれません。
上記のような言葉では「させていただきます。」でなくても、「いたします。」のほうが印象が良いかもしれません。
とあるセミナーに参加した時に
「会場は10階◯◯会議室になります。」
と案内の張り紙が掲示されていました。
「〜になります。」という表現、他にも飲食店などでもよく聞きます。
「こちら、禁煙席になります。」
「1,080円になります。」
など。
「〜になる」は何か変化が伴ったものの表現なので、これらの表現はおかしいですね。
これも、お店などでよく聞きます。
ファストフード店などで、特に過度なサービスを期待していない場合は全く気にしないのですが、それが仕事のやりとりをしているメールであれば、何故か気になってしまいます。
「◯◯さまがお越しになられました。」
「ご覧になられましたでしょうか?」
なども間違えやすいフレーズです。「お越しになる」「ご覧になる」は既に尊敬語なので「〜られる」を加える必要はありません。
誤 ☓ | 正 ◯ |
---|---|
会場は10階◯◯会議室になります | 会場は10階◯◯会議室です |
こちら禁煙席になります | こちら禁煙席です |
◯円になります | ◯円です |
よろしかったでしょうか? | よろしいでしょうか? |
◯◯さまがお越しになられました | ◯◯さまがお越しになりました |
ご覧になられますか? | ご覧になりますか? |
丁寧な言葉を使っているつもりで、実は間違っていることがたくさんあるかもしれません。
最近特に「英語が重要」だとあらゆる場面で言われますが、国語も大事です。読む相手のことをちゃんと意識して文章を書くことが、何より大切な基本だと思います。
若いうちは周囲から注意してもらえますが、だんだん年をとると間違いを正してもらえなくなり、いざという場面で恥ずかしい思いをしてしまいますので、普段から気にしておきましょう。
(追記:2015-12-21)
コラム:IT企業に多い「させていただきます」の乱用と研修の責務
(追記:2017-05-19)
(追記:2020-07-10 以下のコンテンツは削除されていました)
朝のラジオ番組内のコラム「スズキ・ハッピーモーニング 鈴木杏樹のいってらっしゃい」で間違いやすい日本語について話されていました。
5月15日~5月19日のテーマ:『間違いやすい日本語』
「バイト敬語」「させて頂く」についてもわかりやすい解説が文字おこしされています。
(追記:2020-11-03)
「よろしかったでしょうか」は誤用? バイト敬語に違和感をおぼえる理由
最終更新日時:2022-02-22 20:28:20 ・Author:岡田 陽一